中国TVドラマ「如懿伝」全87話の感想続き。
まず、私が推す、ここが見どころだよ!のご紹介。
- ヒロインが飄々としててクール可愛い。演じる周迅さんの演技が最高
- 衣装が素敵。モダンでクール
- 女の友情が熱い。シスターフッド万歳
- 主従の絆も熱い
- イケメン太監!(皇帝も残念なイケメン)
- 個性的な女性陣
- 映像が美しい
以下ネタバレ全開ですので、ご注意ください。
1.飄々系?ヒロイン
ヒロインの如懿(幼名:青櫻)は没落した名門、烏拉那拉氏の格格(お嬢さん)で、雍正帝の皇后の姪。
ちょっと風変わりな女の子という雰囲気で登場し、他の女性キャラが結構感情的になるのに比べて、泣き喚くこともなく、いつもマイペース。どんな困難に直面してもどことなく飄々とした雰囲気で乗り越えていきます。演じている周迅さんの演技が素晴らしくて、如懿の少し変わった性格をうまく表しています。
如懿の好きな花が緑梅というのはポイント高い! 華やかな紅梅や清楚な白梅ではなくて、緑梅というのは彼女の凛としたところを象徴しているみたい。
誰に対してもフラットなので、下々の者には人間的で優しく見える一方、権力のある人(皇帝や皇后、皇太后などなど)や如懿の味方(海蘭)には割合冷たく見えるのかな。すべての人に対して優しいのは当時の身分制社会、特に後宮のような厳格な身分制が敷かれている世界においてはむしろ弱点で、凌雲徹と密通が疑われたときも彼を切り捨てられなかったのが致命傷になってしまった。
皇后という地位にも興味がなくて、ただ幼馴染で初恋の人(乾隆帝弘暦)とずっと仲良く暮したいというささやかな願いを持っていたんだけど、孤独な乾隆帝にほだされて、皇后の富察氏(孝賢皇后)の死後に皇后の地位を継ぐことに。でも、これが悪手だった。他の妃たちの悪意や嫉妬の対象となり、皇帝の嫉妬や猜疑心を引き起こし、すべてが裏目になって、如懿自身も心が折れて、どんどん無力になっていくのを見るのは正直辛かった。周迅さんの演技がうまくてね、如懿の目が死んでいくんだよ……。
如懿の聡明さは「知識で殴る」タイプでなくて、説得力で表現されています。「延禧攻略」や「甄嬛伝」のヒロインは割合、この知識や知恵で殴るタイプなんですが、如懿は人への働きかけがうまいという感じ。相手や状況を見て道理を説くこともあれば(和敬公主の蒙古への降嫁を説得した)、率直に心を開いて話して相手の信頼を得る(皇帝を拒絶していた香見を宥めた)など、状況を見ながら相手を納得させる力を見せています。実際のところ、こういう聡明さを表現するには演技力が必要なので、演技力がいまいちな役者さんだと無理だっただろうなと思ったりもします。
とにかく、演じていた周迅さんの演技力が如懿の魅力をうまく見せていたと思います。
表情がすごくいいのよ。特に、目に感情がこもるので見ていて飽きません。
こういうちょっととぼけた表情が多いんです。飄々とした雰囲気が出ていて可愛い!
細かな表情を追うと、如懿の感情が繊細に表されていて、感嘆。ひたすらため息。
本当にいい女優さんだね。恥ずかしながら中国の女優さんってほとんど知らないんだけど(鞏俐と章子怡くらいしか名前を知らない)、これから彼女の出演作を追いかけることにしました。
あと個人的な趣味でいうと、ハスキーな声が最高に好き! 声フェチの私は女性の低い声が大好き。オタクの方には、「うる星やつら」のさくら先生みたいな声といえばいいかしら? 周迅さんの声が吹き替えされてなくて本当によかったわ。いやー、耳が最高に幸せだ。
2)衣装がモダンでお洒落
前作の「甄嬛伝」の前半は衣装がダサかったんですよ。(後半になって改善されたけど。)衣装にうるさい私は、衣装がいまいちだとそれだけでモチベが下がります。「延禧攻略」も衣装がすごく素敵なのでそれはお薦めできます。「延禧攻略」のほうがシックで、「如懿伝」のほうがモダンって感じですかね。
特に好きなのが色使い。如懿の衣装の色の組み合わせがすごく好き。とにかく衣装をとっかえひっかえしているので飽きません。いつも素敵な衣装でため息ばかりです。
前半部分は特に深い紫をメイン、もしくはアクセントにした衣装が多くて、すごく私好みでした。(後半の衣装もゴージャスかつ落ち着いた色使いでマダムらしくて素敵なんですけどね)
例えばマント。全身でこんな感じ。深い紫色が好き。薄い茶色の毛皮で縁取りしてあって、首回りと裾、開口部に合わせた布も模様が可愛い。
首元のボタンがかわいい。首回りに合わせているファブリックはモダンな柄ですね。紺のバイピングもいいアクセントでかわいい!
紫といえば、下の衣装はモダンでお洒落。(歴史考証的には怪しい衣装だけど)ペパーミントに紫の花模様というのはなかなか大胆な色使いだけどよく似あっている。
花と鳥の意匠もモダンですね。
袖と裾、身頃の合わせ部分(って何て言うの?)には渋い緑の亀甲模様の布を合わせていて、ピンクのバイピング。色も柄もごちゃごちゃと入っているんですが、不思議とうるさくなくて、統一感があって、お洒落だ。
「如懿伝」の衣装は歴史考証的にはモダンすぎるかもしれませんが、素敵な衣装ばかりなので、私としてはOK!
とまあ、衣装について語りだしたらきりがないです。あとで衣装についてのエントリーを書きたいと思っているくらいです。
にしても、本当にお金かかっているね。製作費どれくらいだろう?
3)女同士の強い絆
海蘭(封号は愉)と如懿のシスターフッドが好きです。どちらかというと、海蘭が一方的に如懿のことを強く慕っているという感じではありますが。
皇帝に仕える皇后や妃たちは姉妹関係を結ぶというのが建前であります。皇后をはじめ妃たちは口を揃えて姉妹関係を強調するのですが、実際のところ、強い絆を見せたのは海蘭と如懿の二人くらい。海蘭の場合、もはや如懿を愛しているといっても過言ではないくらい。海蘭はいつも「姐姐(おねえさま)」と呼んでいるけど、如懿は「妹妹」と呼ぶことはないんだよなー。まあ、如懿は他の比較的親しい妃たちにも「妹妹」をつけて呼ぶことはないんだけど。このあたりは如懿の、人間関係に対していい意味でも悪い意味でもフラットな部分がよく出ています。
で、海蘭がすごくいいキャラしてます。当初、大人しくて、身分が比較的低いこともあって、他の妃たちからいじめられていたんです。唯一温かく接してくれたのが如懿だけだったので、如懿のことを何かと頼りにして、慕っていました。でも、如懿が冤罪で冷宮に幽閉されてしまいます。海蘭は差し入れをしたりして如懿を支えるんだけど、他の妃にいじめられます。泣きながら如懿に「一人じゃ頑張れない」と訴えるんだけど、如懿も冷宮に幽閉されている身なので、「自分しか頼れる人はいないんだから頑張って」と励ますんです。で、ここから海蘭は一発奮起します。地味な衣装から華やかな衣装に変え、お化粧も少し明るくして、ついに皇帝の気を引くことに成功!
ピンクの花柄の衣装で華やかな雰囲気を出すのに成功。海蘭はブルーが好きなので、青い衣装が多かったのですが、ここでは房飾りがブルーでアクセントになっていて可愛い!
そして懐妊。このあとは、如懿を冷宮から出すために、自分の胎児を危険にさらしてまで色々後ろ暗い工作を重ねて、遂に如懿を冷宮から解放、妃の位に復帰させることに成功。
このあとも如懿のためならためらわずに手を汚すんですよ。この手の汚しっぷりがすごい。 あの大人しかった海蘭がどんどん強く、黒くなっていく。海蘭の成長がすごく好き。でも、海蘭が強くなるのと対照的に如懿が無力になっていくのが悲しい。
彼女はお姉さまのためにって信じてやっているんです。実際、彼女が手を汚さなければ、凌雲徹と如懿が密通を疑われた時に、如懿は助からなかったんだよね。ただ、この事件が如懿と海蘭の間にわだかまりを残すことに。海蘭の選択(如懿の潔白を証明するために、如懿の命で凌雲徹を処刑すること)は正しかったし、如懿がこの選択をすべきだった。でも、如懿はこの段階で心が折れていた(皇帝が如懿の言うことを全く信じてくれなかったし、凌雲徹を宦官に貶めたり、如懿にDV夫のような嫌がらせをしたため。後述しますが)から、全く判断力を無くしていたんだよね。まあ、如懿が優しいということもあるんだけど。
結果、海蘭が手を汚すことに。でも、如懿は海蘭の処置に納得していなくて、心を閉ざしてしまった。でも、それでも、海蘭は如懿のことを信じているのよ。如懿はきっとわかってくれる、と。健気だね。
如懿は海蘭が手を汚すことを内心快く思っていなかったんだけど、それは彼女がやったことは自分がやったことと同じだと認識していて、苦痛を感じていたんだよね。(如懿は基本的に手を汚したくない。)でも、それは如懿も海蘭を自分のことのように思っていたからであって、二人の複雑な絆を思わせます。
結局、海蘭の本音は、自分の生んだ第5皇子永琪を如懿の養子にして(海蘭の身分が比較的低いので)、如懿と永琪と自分の三人で仲良く暮らしたいというもの。ここには皇帝の入る余地がない……。皇帝はどうでもいいんですよね。女二人で息子を育てて穏やかに暮らしたいのかー。皇帝なんて眼中になくて笑っちゃいます。
これは珍しく、海蘭(右)のほうが派手な衣装ですね。 如懿は狩場の草原に映える色の衣装にしたほうがよかったんじゃないかな。
また長くなったので、エントリー分けます。
続く。